2025/05/15
4月30日、栃木県の「あしかがフラワーパーク」で念願の大藤を鑑賞してきました。
シンボルともいえる大藤は樹齢160年を超える1本の巨樹から成り立っています。その巨樹は、29年前に日本の女性樹木医第一号である塚本こなみ氏のもと移植されたもので、そこから藤の名所として世界中に名を馳せるストーリーが始まりました。今や1本の幹から拡がる藤棚は約1000平方メートルにまでなり、その圧倒的な景観で人々を魅了しています。
今回この大藤の歴史を振り返り、恥ずかしながら「樹木医」という資格があることを初めて知りました。さまざまな医師と同様に、この「樹木医」も難関な試験に合格し、実務経験を積み、「まず、原因を診断し、問題を取り除き、治療をする。」そうです。樹木医の世界では、「枝葉(えだは)の症状はすべて根にある。葉や枝の病の原因は、根だということ。逆に根が健康であれば、樹は必ず健康に育つことができる。」とのこと。当たり前のことかもしれませんが、ヒトの健康にも通じるところがあると大変勉強になりました。
29年前、この大藤を市内の別の場所から移植させるのに、当時述べ2000人もの人々が従事し移動させたそうです。「藤の移植で一番大切なのは、樹の幹を傷つけないこと。藤の幹は一番デリケートなところで、ひとたび樹皮と内側を傷つけてしまうと、そこから腐っていく。」と。どうしたら繊細な藤の幹を傷つけずに持ち上げることができるかを考え、骨折の際の治療用ギプスにヒントを得て石こう包帯を幹に巻き付けて保護し、クレーンで吊り上げたそうです。まるで人間の治療さながらの大処置です。こうして、さまざまな困難を乗り越え、1997年不可能と言われた移植を見事に成功させ、「あしかがフラワーパーク」が開園しました。多くの人々の大変な努力のもと、国内初の移植を成功させたストーリーを背景に、この大藤を鑑賞すると、その美しさがいっそう深まります。今年の大藤の季節は終わってしまいますが、是非機会がありましたら、「あしかがフラワーパーク」にお出かけし、圧巻の大藤をご覧ください。オススメです。
参考資料:ジュリアン・ライオール 「日本初の女性樹木医、塚本こなみさんー花と人を育む日々」 nippon.com